個人としての自分自身でも、企業でも、そして地域の活性化でも、その特徴を生かして、活動を活発化し収益を増やすという知的資産経営の考え方は、多くの方にメリットをもたらすものです。
「知的」「資産」「経営」という言葉に囚われることなく、課題を解決したり、新たな活動を考えるために、知的資産経営という考え方があるのです。
マイクロソフト社のビルゲイツは、「当社の最も重要な資産である開発能力は、バランスシートには掲載されない。」と述べています。
企業価値の50%以上を無形資産が占める現代、企業が収益の最も大きな源泉である知的資産を認識することが非常に重要なのです。
自社の知的資産をしっかりと把握し、それを活用することで経営課題を解決や新しい経営戦略を構築、業績の向上に結びつけることを「知的資産経営」といい、「無形資産が競争優位の主要な源泉になっている」今、無形資産を生かす価値創造の戦略が必要になっているのです。
一般に「知的資産経営」の話をする場合、ふしぎなことに、「資産」の話しか行われません。
これは、スポーツに例えるなら、プラスの面、つまりオフェンス(攻撃)だけを考えて話を進めているようなものです。
当然、マイナスの面、つまりディフェンス(防御)を考えないスポーツが無いように、経営として知的資産を扱うなら、負の部分についても考えておく必要があります。
「魔がさした」という言葉があるように、不注意な行動や、不適切な業務運営が会社経営に大きなダメージを与えることは、ご存知の通りです。ですから知的資産経営に取り組む場合、こうした「負の知的資産(負の経営要素)」に対する対策も経営戦略の一環として考慮するべきです。
また、負と考えがちな経営要素は、ともすればマイナスを改善してもゼロになるだけと考えがちですが、企業にとってイノベーションにつながる物であるかも知れません。
ですから、知的資産経営という場合、「資産」というイメージに固執する必要はなく、知的資産経営とは、財務諸表に掲載されない、無形の経営要素を生かすものと考えるべきと言えます。
経営者がかかえる課題はつきることがありません。
『昔の成功体験は通用しない』、『そんな考え方は古い』と言われ、今のままではじり貧、それは分かっていても、なかなか抜け出せそうにない。長年やってきたやり方と違うことは急には出来ない。そんな経営者の方も少なくないでしょう。
1950年代前後の経済社会は、製造業を中心とするものであり、工場や機械・設備などの生産財や生み出した商品が企業の価値でした。しかし現代は、知識・知恵を中心とした経済社会に変化しています。従来の考え方による財務諸表と実際の企業価値が合致せず、それが利害関係者に誤った判断材料を与えたり、インサイダー取引などの原因にもなったりしているのです。
中小企業経営者やその後継者も、こうした環境変化に対応しようと、経営戦略や経営手法を学ぶため、多くの方がセミナーに参加します。けれどこうした「学習」による知識の取得が事態を解決するどころか、さらに悪化させる可能性すらあると言われています。
それは、競争優位を高めようとする取組みの大半は、実際にはベスト・プラクティス(社内外の成功事例や成功モデル)を実行するだけで終わり、それでは他に送れてついて行くのがやっとだからです。
かつて偉大だった経営学者の学説やビジネススクールで教える古い理論に、今でも多くの人が囚われていますが、それらは消滅しつつある過去の時代を読み解くための理論だとも言われているということを認識する必要があります。
ビジネススクールで教育を受け、大手企業で訓練された人ほど、過去の知恵というレンズを通して世界を見ることが身に付いており、それがますます深みにはまる原因でもあります。
知的資産経営の意味と役割
こうした状況から抜け出し、企業の新しい戦略を考えるために、知的資産経営への関心が高まっているのです。
「知的資産」とは、バランスシート上に記載されていつ資産以外の無形の経営要素をいい、企業等における競争力の源泉である、人材、技術、技能、知的財産(特許・ブランド等)、組織力、経営理念、ネットワークなどの総称を言います。
知的資産を考えることがなぜ大切かをあらためて述べれば、自社が持つポテンシャルを、経営者自らが再認識し、それを顧客・ユーザー、金融機関、投資家、従業員、就職希望者当に明確にするだけでなく、経営課題の解決、経営戦略の再構築、さらには潜在的なリスクの発見や事業承継にも重要な役割を果たすからです。
融資の有利な獲得と企業の成長
つぎに目を転じて、金融機関の側から企業を見ることにします。『「預金等受入金融機関に係る検査評定制度について」の一部改正案の公表について』(金融庁)によると、金融機関に対する加点項目として、「企業の定量面(P/L、B/S)の審査に偏重することなく、「目利き」能力の向上をはかり、顧客の技術力や販売力等の定性面を勘案するなど、積極的な工夫・取組みを行っている場合」などで、金融機関が企業の知的資産を重視する姿勢に対して金融庁が加点評定することが公表されています。
これは、企業の知的資産経営に対する具体的な評価であり、今後、こうした動きが各地域の金融機関で広がってくると予想されるのです。
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